<体験談>12月の暖かな日の午後に

2017年の3月に国立生活者ネットワークとNPO法人ACTくにたち すてっき共催で「体験しませんか-認知症模擬演技者と接し方を学ぶ-」を開催しました。その企画に参加したネットメンバーのひとりの体験談です。

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-ひとり散歩のかたにおつきあい-

12月とは思えないとても暖かな日の午後、ウォーキングがてら立川まで買い物に出掛けようと、学園通りを立川方面に向かって歩いていた時のことでした。

郵政研修所の南側あたりで、コートもバッグも持たずハンカチだけを手に持った、70代後半と思われる素敵なセーターを着た女性が向こう側から歩いていらっしゃいました。暖かい日だからひとりで散歩しているのかなと思いながらすれ違おうとした時、その女性が不安そうな表情で「わたし、今、自分が何でここにいるのかわからないんです。こんなこと初めてで・・・」と戸惑いながら私に訴えてこられました。
さて、どうしたものかと思案していた時、数ヶ月前に参加した認知症ワークショップでの寸劇を思い出し、まず、なるべくご本人の不安な気持ちに寄り添い、何とか情報を得ようと色々お話していく内に、ご自宅の電話番号を思い出されたので、早速かけてみたのですが、お留守でした。

次に、地域包括センターに連絡してみるという知識も(前述ワークショップ)で得ていたので、国立市役所に電話していると、ご本人がぼんやりと思い出されたようで「家は立川です。」と、おっしゃったので市役所との電話を切り、立川のどの辺かを探るべく「お買い物はいつもどこでするのですか?」等々、世間話をしていると、少しずつ思い出されたのか「国立駅まで行けば家に帰れます。」とおっしゃったので、直ぐさま一緒にバスに乗り(もしもの時は駅前の交番に行こうと思いながら)、駅に向かいました。

国立駅からは一人で帰れるとおっしゃったのですが、心配なのでご一緒させていただくことにし、駅からバスに乗るでもなく歩き始めた後ろ姿を、不安な気持ちでついて行きました。とぼとぼと歩けど歩けど住居表示は国分寺市にはなってもなかなか立川市にはならず、不安はつのるばかりでしたが、30分位歩いたでしょうか、ようやくご自宅に到着。心底ホッとしました。

家の中から慌てて妹さんが出て来られ、これまでの経緯を説明しお話を伺うと、立川の駅ビルのレストランで昼食中にお姉さんが一人でトイレに行ったきり戻ってこず、大慌てで探したが見つからず、定員さんも一緒に館内放送をしてくれたそうですが見つからず、どうしようもなくて警察に届けました。もしかして、本人が家に帰っているかもしれないので自宅に戻ってみるように言われ、少し前に戻ってきたとのこと。こんなことは初めてだとご家族も戸惑っていらっしゃいました。

無事送り届けることが出来ほっとしましたが、身につまされる経験でした。 (Y.I)

※「介護者家族の集い、みんなの部屋 通信第5号」より転載
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