市民が育てる景観まちづくり 甦った赤い三角屋根の旧駅舎 ― 国立発

保存派VS破棄派 ― 議会の壁を越えて、駅舎は市の有形文化財に
今、国立駅からまっすぐ南に延びる大学通りに立って駅を眺めると、高架化された駅の前にまるで玩具シルバニアファミリーのお家のような、赤い三角屋根の可愛らしい建築物が見える。2006年に解体・保存されていた旧国立駅舎の再築がこの2020年4月に完了し、市民が活用できる場としてスタート、6・7日と公開された。(新型コロナ感染症拡大防止のため、現在は閉鎖している)国立駅で80年間行き交う人々を見つめてきた駅舎は、14年間の空白を経て生まれ変わり、今どんな気持ちで国立の景色を眺めているだろう。

市民、若者らの自由な発想で  活用される日を待つ旧駅。

JRが連続立体交差化のため駅舎の撤去を表明したのが1993年。議会は駅舎保存派と破棄派に二分し議論が繰り広げられた。再築の目処が立たないまま2006年、駅舎は市の有形文化財に指定され、解体・保管されることが決まった。

生活者ネットワークは一貫して駅舎保存の立場で、市民参加のまちづくりを掲げ、2004年の景観法施行のきっかけともなった国立の景観問題で市民と連携して活動した。大学通りと円形広場・国立駅舎の景観は一体のものであり、歴史的建造物が街に溶け込んだ暮らしを守りたいという市民の強い願いがあった。

2009年策定された「国立駅周辺まちづくり基本計画」は、“まちとつながる、緑と文化のくにたち広場”を謳い、旧駅舎は人々の交流を生み出す市民活動の場所として活用されると記された。

 

再築された旧駅舎 ― 市民・若者の活用拠点に
生活者ネットが市民と共に行ったシンポジウムや都政フォーラムでは、各地で活躍する専門家を交え、多くの市民の意見を聞いた。交通車両を整理し、歩行者を大事にする、電車の乗降機能はもちろん、親子連れ、高齢者、しょうがい者、誰もが過ごしやすい空間でなければならないと。2013年、私がパネリストとして参加したシンポジウムでは、旧駅舎を含めた駅前空間を軸に、どのようなまちづくりをしていきたいか、自由に意見交換をした。私は、国立が子どもを連れて気兼ねなく外出できるような街であってほしいと率直な気持ちを話した。これが、生活者ネットと関わりまちづくりに関心を持つきっかけとなった。

これから旧駅舎を活用し愛していくのは、かつての国立駅を知らない私の子ども達世代である。広間には自由に弾けるピアノが置かれ、いつでも音楽が流れてくるような国立らしい駅前を創出、若者の自由な発想が生きる活用で、国立を行き交う全ての人々に幸福の記憶として刻まれていくことをこれからも求め活動していきたい。(文責:こはまかおる)