12月議会初日~決算討論

12月議会が始まりました。 
昨日の初日本会議では、10月に開かれた2012年度決算特別委員会を受け、各会派の代表者討論が行われ、生活者ネットからは小川ひろみが登壇。

佐藤市長に代わって2年目の決算を検証することで、“佐藤施政の方向性”を見直す有意義な機会となりました。
少々長めですが、以下「決算討論」全文です。

生活者ネットを代表して2012年度一般会計決算については「不認定」。
特別会計のうち、国民健康保険・下水道・介護保険は「認定」、
後期高齢者医療特別会計決算は「不認定」とする討論をいたします。

 佐藤市政になって行われた財政健全化による料金改定は、介護保険料、国民健康保険料、学童保育育成料、自転車駐車場使用料、そして総合体育館施設使用料で、低所得者に配慮した改定もありましたが、多くはかなりの値上げとなりました。佐藤市長の公約の中心に、「法とルールを守り赤字市政からの脱却を図る」がありますから、佐藤市長としては、公約通り行財政改革をすすめているお考えでしょう。生活者ネットとしては、厳しい財政切り詰めの際に不可欠なことは、長期展望に立ったまちづくりによる活性化や超少子高齢社会に対応できる市の明確なビジョンを市民と広く共有すること、また、財政健全化にむけた市民負担見直しに係る公正なルールが確立されていることだと考えます。2012年度決算において、佐藤市長が、市民目線の行財政運営をいかに自律的にすすめているかを振り返ってみました。

 最初に評価したいのは、活き活き都市農業推進事業です。総額一億円を超える、国立市にとってかつてない規模の事業で、農業・商業・消費者・行政が連携を取りながら、新たな都市農業のあり方を模索することを方針に、豊かな取り組みを進めていることがわかりました。古民家東側に建設される“城山さとのいえ”は、子どもからお年寄りまでが集える体験学習施設、国立の農業の発信基地となります。国立の新たな観光スポットとなる意味でも注目したいと思います。本事業も、残すところ2カ年。国の農業政策は、日本の農業の現状を圧迫しかねない聖域なき関税撤廃のTPP締結の流れの中にあります。その流れに抗う意味でも、本事業によって、国立の農業者に、農業の多面的機能や需要を実感し元気になっていただきたいと思います。今週末に予定されている「くにたちマルシェ」や「くにたち野菜フェア」など楽しいイベントを通して、消費者も単に消費する人であることを越えて都市農業を支え関わる市民として、農業者とのさらなる関係づくりが出来ていくことを期待しています。

   次に、2012年度に行われた組織改正で、子ども家庭部子育て支援課にDV被害者支援のための正規職員が増員され、「ひとり親・女性支援係」が置かれたことは大きな前進でした。一人で悩みを抱えこまないよう、電話相談を毎日受けられる予算付けを行った点を大きく評価したいと思います。そこで、懸案の「男女平等推進条例」を予定どおり当事者参加で制定していっていただきたいと思いますが、最新の「実施計画」に予算化されていないことは納得いきません。

 一方、評価できないのが、予防接種のうち、HPVワクチン―別名子宮頸がんワクチンに係る事業です。2012年度は1,013万円の支出でした。国立市の初回接種率は34.4%。多摩地域における接種率は50%台から15%台までと、接種率に大きく差がでました。その理由として、自治体がどう薦めたか、勧奨したかに違いがあったことが予算審査からわかりました。ワクチンを接種したばかりに健康を害し痛みに苦しむ若い女性たちの治療・救済も進んでいないなかで、ワクチン接種再開はあり得ません。尚かつ、自治体として持ち出しも多く、接種は即刻中止すべきと考えます。厚労省が製薬会社、推進派の医師等の論理で、今後自治体の接種勧奨再開をおこなったとしても、佐藤市長、佐藤市長におかれましては、あくまでも自治事務である点を押さえて、顔が見える子どもたちのかけがえの無い健康と人権を守って欲しいと切に願います。それこそが、基礎自治体における、住民の命を守る首長の責任ではないでしょうか。

    さらに、学童保育延長保育料の徴収漏れについては、苦言を呈さなくてはなりません。議会でも延長保育と育成料自体の改定に関して多くの議論がありました。生活者ネットとしては保護者への説明不足で理解が得られていない、値上げ幅が大きすぎることを理由に、育成料の改定については反対しました。条例は原案通り可決されたわけですが、その後、ほぼ1年間に亘る長い間、延長保育料の未徴収に気付かないという、民間であれば徴収不能となりかねない杜撰な事態が起きていました。一年後の請求に対して不信感から支払いを躊躇している保護者に対しての丁寧な対応はもちろんのこと、組織としての猛省と、再発防止策の徹底を求めます。

    下新田土地区画整理事業の施工不良事故による2012年度の決算未執行は4,162万と巨額で、監査から厳しい指摘がありました。国立市における組合施工による区画整理事業は、この数年、不名誉な刑事事件と施工不良事故が続き、信用は失墜しています。組合施工の区画整理事業の問題点を洗い出し、検証する必要があると考えます。 

 加えて、佐藤市長は、「違法を重ね迷走する市政にNO!」をスローガンに掲げて市長戦を闘い、その中心に住基ネット接続を置いていました。総務省の住基ネット導入から10年。導入経費400億円により日本の大手電機会社を潤す結果をもたらしたネットワークシステムですが、市長選で、強く再稼働を訴えたわりには、1年を経て、国立での住基カードの普及率は3.7%と低く、大半の人が必要性を感じられない事業であったことが明らかになりました。ここへ来てようやく、システム更新の財政負担にあえぐ地方自治体から、住基ネット不要論の本音も囁かれ始めました。9年間不接続で通した国立市の主張、そして、住基ネットを接続するか否かを住民投票で決めようまでした住民のこだわりは、住民参加型の新たな政治のあり方、すなわち「シビック・ガバメント=市民による政治」の先進例として歴史に刻まれ、今後も注目を集め続けるでしょう。

    最後に、生活者ネットが2012年度決算を不認定とした一番の理由を申し述べます。それは、国立市が元市長、前市長を訴えている損害賠償請求事件が3件も続いているためです。

住基ネットに関する訴訟は、市長が司法に判断を委ねてしまっているばっかりに、一審判決で、当時の「保険年金課長、市民部長、総務課長」が「漫然と支出をした」として「財務会計法規上の義務に違反する違法なものであった」とまで言い渡されており、とうてい看過できません。

 また、国立市が上原元市長に約4,000万円もの支払いを求めている重大な訴訟についてです。住民による監査請求・住民訴訟・そしてその判決確定に伴って国立市が原告となる損害賠償請求事件の形、つまり現佐藤市長が「粛々とすすめるだけでございます」と言い逃れができるいわゆる「義務づけ訴訟」ですが、本来は、地方自治法上の二元代表制を補う、住民参画の貴重な制度です。これまでは、首長や行政職員の明らかなる横領や財務会計上の違反行為が対象とされてきましたが、今国立市が賠償請求している裁判の方向性は、全国初となる制度の悪用ではないかと言われています。本裁判は、実のところ、現佐藤市長も含めて全国の首長のそれこそ首を絞める行為につながり、司法の歴史、国立市政、さらに地方自治の歴史に大きな汚点を残すことになります。市民に選ばれた首長が、選挙公約に掲げた政策実行のために行った行為を、後から元市長個人に損害賠償請求するような裁判を続けるのであれば、生活者ネットとしては決算を不認定にせざるをえません。

特別会計についてです。
後期高齢者医療特別会計は、制度自体の問題が明かになり見直しがすすめられているので不認定とします。国保・下水道・介護保険の各特別会計は、いずれも財政負担が重く悩ましいところですが、これこそ住民の公衆衛生や健康に多く関わる施策で、「24
時間365日安心・安全のまちづくり」を標榜する佐藤市長の本領が発揮されるところです。2012年度中に、国立市の高齢化率は20%を越えました。市内に4箇所ある市直営の地域包括支援センターが、地域にある様々な拠点と資源をネットワークして見守りの態勢をつくっていくことに期待が寄せられています。一人暮らしであっても、障がいがあっても、そのネットワークに自分らしいつながりと居場所をみつけて、誰もが安心して地域で暮らし続けられるコミュニティーにこの国立市が再生されていくことに期待し、認定といたします。
                                     以上