生活者ネットは、身近な地下水を保全し飲み続ける提案を続けるなか、八ッ場ダム計画の中止を訴えてきました。山そのものが保水力を持ったダムと言われながら、計画の後戻りが許されなかった半世紀をふりかえり、蛇口の向こうにある水問題を改めて検証します。
<治水利水の必要性>
治水の根拠は、1947年のカスリーン台風でした。堤防整備が進んだ今、利根川が氾濫することはありません。むしろ、治水のためには堆積した土砂の浚渫を丁寧に行うことが重要です。
利水の面でも、東京都の水需要予測の1日最大配水量600万㎥という数字は、極めて過大です。すでに人口減少時代に入り、節水技術の進歩や2008年度の実績から見ても、東京都は「水余り」の状態にあります。
<新たな災害を招く危険性も>
ダム予定地は、火山性の堆積岩と溶岩が交互に重なる地層で、地滑りが起きやすく、ダム建設に向かない脆弱な地盤です。また、吾妻川は、五寸釘が一週間で針ほど細くなってしまう強酸性の水です。これを中和させるため品木ダムを造りましたが、そうまでして水を引く必要があったのでしょうか。
<市民の税の使途は>
知事は「中止した場合には都がすでに支出した負担金457億円を返還せよ」と言います。しかし、過大な水需要予測の見直しを拒否して八ッ場ダム予定地の皆さんを苦しめ続けてきた東京都には返還を要求する資格はありません。
もし、事業を継続した場合、今後、地滑り対策のための費用や、東京電力の発電所への減電の補償費等、更に約1000億円の増額が予測されます。
今一番大事なことは、八ッ場ダムを中止して、今後の現地住民の生活再建を、国がしっかり補償することです。
<裁判のゆくえは>
生活者ネットは、地下水を守る立場から、八ッ場ダム建設中止を求める市民団体とともに活動してきました。5年に及ぶ住民訴訟は、控訴審に突入しています。第1回口頭弁論は、2010年2月頃の見込みです。
写真は、上「 ダム湖底になる予定になる予定だった川原畑辺り」
下左「品木ダム水質管理所」 下右「ダムに沈む住宅地の代替え地工事」 ※すべて2003年12月八ッ場視察にて撮影